NPO法人 流域環境保全ネットワーク
淡水魚・汽水魚
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- イチモンジタナゴ -

婚姻色が鮮やかに現れたオスと産卵管の伸びたメス。
婚姻色が鮮やかに現れたオスと産卵管の伸びたメス。 (三重県 ) [ 撮影 © 鹿野 雄一 ]

学名: Acheilognathus cyanostigma
別名:
分類: コイ目 コイ科 タナゴ亜科
分布: 琵琶湖周辺の本州

生態:イチモンジタナゴは生きた淡水二枚貝の鰓内に卵を産み込むタナゴ類の1種で日本固有種です。本種は主に池や河川でも流れの緩い止水域に生息しています。産卵期は4-7月で盛期は琵琶湖で7月(平井,1964)、三重県のため池では5月で、主にドブガイ属(Anodonta)貝類を利用しています。成熟開始サイズは27 mmで、最大66 mmになります。産卵時の産卵管長は約30 mmで、主に貝の内鰓の中央部の水路に産み込まれています。卵サイズは1.5 mm3で、卵形は長細く(約長径3,短径1.3 mm)、ドブガイ属に特殊化した形と推測している(Kitamura 2006)。

生息地と個体群の現状:本種は琵琶湖周辺地域に分布していましたが、国外外来魚のタイリクバラタナゴとの競合、およびブラックバスやブルーギルの捕食、ため池の消失や河川環境の悪化により、天然の生息地では絶滅の危機に瀕しています。

保全対策と活動:三重県南部地方のため池個体群では、地元保全団体による活動が行われ、池を干すことで軟泥の除去による環境の改善と外来種駆除を行い、その後本種の放流を行って生息地を増やしています(松阪モロコの会)。滋賀県では、法律により野外での捕獲が禁止されています。

その他:本種は、人為的放流により日本各地で定着しており(熊本県緑川水系など)、その地域固有の他種が受ける生態的影響が懸念されています。

レッドデータ:絶滅危惧IA類(CR)

文: 北村 淳一

  • 参考文献
  • Kitamura J.(2006) "The reproductive ecology of the striped bitterling Acheilognathus cyanostigma (Cyprinidae, Acheilognathinae)." Ichthyological Reserarch 53: 216-222