NPO法人 流域環境保全ネットワーク
残された聖域

- 宮川のネコギギ -

夏の夜、踊るように泳ぐネコギギたち。ネコギギは、空隙が多く、透き通った流れを好む。
夏の夜、踊るように泳ぐネコギギたち。ネコギギは、空隙が多く、透き通った流れを好む。(三重県 宮川 ) [ 撮影 © 鹿野 雄一 ]

紀伊半島の大台ケ原から伊勢湾へと流れる「宮川」は、日本を代表する清流の一つであり、多くの生き物が生息しています。中でも「ネコギギ」は宮川を象徴する魚で、国の天然記念物にも指定されています。

淡水魚の中で国の天然記念物に指定されている種は他にイタセンパラやアユモドキなどがありますが、ネコギギは野生個体が多く、地元では比較的身近な魚です。とはいえ、ネコギギは本来、伊勢湾と三河湾に注ぐ河川に広く分布していたのが、近年の環境の変化によりほとんどの河川では絶滅してしまいました。

このように宮川でネコギギが生き残ることができたのも、日本一雨が多いとされる大台ケ原からの豊かな水と、比較的良好に保たれた河川環境のためかと思われます。しかし残念なことに、2004年秋に宮川は大きな台風災害に見舞われ、ネコギギの棲む河川環境も大きく破壊されました。くわえてその後、大規模な河川改修工事が長期にわたり続けられ、それらのためにネコギギの数も目に見えて減ってしまいました。

現在、地元の方々のご協力を得て、宮川のネコギギ個体群のモニタリング調査を継続的に行っており、今後もその動向に注視する予定です。

文: 鹿野 雄一