NPO法人 流域環境保全ネットワーク
水生生物の危機

- 乱獲 -

生物資源を永続的に食物・愛玩利用するために、人口が増えた人間社会においてその管理は必要である。水産有用種である漁業資源に対しては、漁獲規制があるように厳密に法で管理されているが、水産有用種でなく近年愛玩生物としての価値が上がった規制のない身近な水生生物は、一時の流行による「乱獲」で絶滅の危機に追いやられてしまうことがある。特に、他の環境要因によって数が減少した個体群での乱獲は、その影響が甚大であろう。水生生物にとっての乱獲の脅威は、生息地が消失または生息地の環境が悪化することにより生息数が減少し希少価値が高まり、さらに愛好家と愛好家と愛玩動物事業者の採集欲が増加し生息地あたりの漁獲圧が高くなるといった負のスパイラルで、今まさに起こっていると思われる。減少してしまった貴重な水生生物は、漁業資源と同様に管理しなければ、もはや絶滅する時代になっている。愛好家の皆様には生物採集という自然相手の楽しみが規制されて大変気の毒であるが、野生水生生物個体群の再生産に配慮した採集や観察を心がけて頂けたら幸いである。今後、愛好家と愛玩動物事業者向けの「生物採集ガイドライン」が愛好家と愛玩動物事業者によって制作されることが望まれる。

文: 北村 淳一

  • 参考文献
  • 佐藤拓哉・渡辺勝敏 (2004) "佐藤拓哉・渡辺勝敏. 世界最南限のイワナ個体群“キリクチ”の産卵場所特性,および漁獲圧が個体群に与える影響." 魚類学雑誌: 51, 51-59.