NPO法人 流域環境保全ネットワーク
水生生物の危機

- 外来種によるかく乱 -

川岸の護岸にずらりと並んで甲羅干しするミシシッピアカミミガメ。外来種はこのような人工的な環境に適応していることが多い。環境の人工的な改変は、在来種を追いやると共に外来種に適した環境を提供してしまうことがある。
川岸の護岸にずらりと並んで甲羅干しするミシシッピアカミミガメ。外来種はこのような人工的な環境に適応していることが多い。環境の人工的な改変は、在来種を追いやると共に外来種に適した環境を提供してしまうことがある。 [ 撮影 © 鹿野 雄一 ]
外来種問題では様々な価値観や利害関係が衝突する。一方的な見方だけではどこまでも平行線をたどり、解決は難しい。
外来種問題では様々な価値観や利害関係が衝突する。一方的な見方だけではどこまでも平行線をたどり、解決は難しい。 [ 撮影 © 鹿野 雄一 ]

外来種とそれが生態系へ与える影響は近年になって大きく社会問題となり、みなさんもご存知のように「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」などという仰々しい法律までできてしまう顛末になりました。

淡水生物における外来種の影響を考えるとき、陸上生物と比較して大きく違うことが二つあります。一つは、水中という人の目に触れない世界でいつのまにか事態が進行してしまう、ということです。たとえば「セイタカアワダチソウ」が戦後日本で急速に分布を広げた際は、その黄色く目立つ花のために、その変化を誰もが実感することができたでしょう。しかし、ブルーギルが日本で分布を広げた際は、当時、一部の釣り人を除きほとんどの人々が、文字通り水面下で劇的な生態系の変化が起こっていることに気づくことはなかったでしょう。「うちの子どもが見たことも無い変な魚を釣ってきた」というときは、すでに変化の最終局面に至っているわけです。

もう一つの違いは、淡水環境(特に湖沼)は多くの場合狭く閉じた空間であるということです。そのために逃げ場が無く、外来種が一度移入されると、その中で在来種を絶滅にまで容易に追い込んでしまうということです。この場合閉じた空間が災いしたわけですが、逆に幸いすることもあります。地上を移動する淡水魚は日本にはいませんから、人為的に移入されない限り、外来種が分布を拡大することはまずないということです(ただし鳥や獣が、捕まえた魚を別の池で落としてしまうような可能性はあるかもしれません)。

以上のことから、淡水生物の外来魚を問題に際しては、「常に水面下の監視を怠らないこと」および「人為的に移入しないこと」、この二つの努力で大きな効果が得られると思われます。特に近年はペットブームのため、多くの種類の淡水生物(熱帯魚、ザリガニ類、亀類など)が家庭で飼育されています。野外に放さずに最後まで飼育することが重要です。

文: 鹿野 雄一

  • 参考文献
  • 環境省 (2004) "特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律" http://www.env.go.jp/nature/intro/