NPO法人 流域環境保全ネットワーク
死にゆく日本の川と湖沼

- 河川の護岸化・直線化 -

河床と川岸をコンクリートで固められる「三面張り工法」は、多くの水生生物から生息場所を奪う。景観としても無機質で殺伐とした印象を与える。
河床と川岸をコンクリートで固められる「三面張り工法」は、多くの水生生物から生息場所を奪う。景観としても無機質で殺伐とした印象を与える。(新潟県 2007.11.11 ) [ 撮影 © 鹿野 雄一 ]

現在日本の多くの河川は、様々な理由から人工的な手を加えられています。洪水や地形の変動を防ぐため護岸をコンクリートで固めたり、人間が使える土地を増やすために流れを直線化するなどの改変が、高度経済成長と共に当たり前のように行われてきました。しかし一方で、そのような河川の極端な改変が別の問題を引き起こしているのも事実です。

水は人間だけでなくあらゆる生物にとって命の源であり、したがって多くの生物が河川環境に依存して生きています。それは水の中に生きる淡水魚や水生昆虫だけではありません。河原や水際でしか生きることのできない植物や昆虫もいます。鳥や哺乳類も水を求めて川岸にやってきます。河川の護岸化や直線化が、このような生物たちを絶滅もしくは絶滅寸前にまで追い込んでいるのが現状です。

問題は野生生物だけではないでしょう。人間にとっても、人工化された河川は、本来の河川がが持つ「自然美」としての景観機能を失っており、心の安らぎどころか殺伐とした不健全な印象を与えます。近年の「心の問題」や「犯罪の増加」の間接的な要因の一つが、このような自然美の欠損にあるかもしれないと考えるのは私だけでしょうか。

文: 鹿野 雄一